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 松本民芸家具は工場で出来た時がその完成ではありません。使い手によって磨き込まれ、より美しく育っていく過程を経て、完成していくものだと考えています。伝統家具に使用される木材、金具、塗装などは全て年月とともに変化していきます。木材は環境によって膨張したり痩せたりといった動きを常に繰り返していますし、金物は錆び、塗装は色が徐々に透け、良く触る部分は色が取れ、やがて摩耗して角が丸くなります。これら伝統家具は、日々のお手入れを行いながら年を経て、時には修理を行いながらも使い続けることで、新品の時とはまた違ったより深い本物の美しさを醸し出します。そのようにして使い手とともに時を経た家具は、単なる「もの」と「ひと」といった関係を越えて家庭の中に溶け込み、生活によく調和し、離れがたい愛着を生じるようになり、親から子へ、子から孫へと使い継がれて行きます。
 昔は自分の身の周りの「もの」に対して、それがどのような材料で、どのように作られ、取り扱いはどうしたら一番良いか、それが年月を経るとどのような姿に変化するのかを熟知していた人が多かったと聞いております。長く大切に使いたいといった、ものに対するいたわりの心があればこそと思います。

日常のお手入れ
 日常のお手入れにつきましては、特別なお手入れ用品を揃えていただく必要はなく、固く絞った布巾と乾拭きとで毎日拭いて下さい。松本民芸家具の製品は、通常製品、漆製品を問わず毎日拭きこむことで色が透け、つやを増すよう丹念に自然な塗装を施してあります。購入された初期はごく僅かな傷を付けてしまっても気になるかもしれません。しかし、松本民芸家具は現在一般に多く用いられているような硬質な塗装を用いず、あえて昔ながらの塗装法を施すことで、日々の御使用とお手入れによる経年変化が、よりはっきりとあらわれやすくなっています。

家具が長年の使用で
汚れてしまったら
テーブルの天板や椅子の肘掛けがべたつく。このような症状は特にお食事に使用するダイニングテーブルや椅子などに起こりやすく、家具の表面に油脂分や汚れが付着したままの状態が長期間続くことによって塗膜そのものが変質してしまうことが原因です(お食事での油分だけでなく、空気中の油煙、皮脂や、軟膏、ハンドクリームなどに含まれる成分でもこのような症状が出ることがあります)。このようになる事を防ぐ為には、上記の日常のお手入れと同時に、家具の表面にくもりを感じるようになりましたら、塗装面の油分と汚れを落とすため、食器洗い用の中性洗剤を通常よりさらに多めの水で薄め、それを布巾に浸して汚れを拭き取っていただき、後、洗剤を残さないよう水で絞った布巾にてよく拭き取って下さい。但し既にべたつき症状が出てしまっている場合には本格的な修理が必要ですのでご用命下さい。
天板に白い痕が
出来てしまったら
熱いものを直接置いたり、アルコール等を含む液体を付着させてしまった場合に発生するこの現象は、あくまでも表面的なものであり、ご使用に重大な影響を及ぼすことはございません。また、そのままお使いいただくと時が経つにつれ消えてしまうこともございます。年月を経ても消えない白い痕を完全に直すには修理が必要ですので、ご用命いただければ対応させていただきます。
抽斗の下から
白い粉が出る
これは抽斗の底の部分と、それを受ける本体とがこすれ、次第に木材が削れて粉状になって出てくるものです。これは特に長年の使用で必然的に起こる現象であり、対処方法といたしましては、抽斗を抜き出し、底面左右のすれる部分にロウソクなどを塗り込んでください。こうすることで粉は出なくなります。しかし、将来的なことを考えますとまた発生し、抽斗自体にがたつきが生じることが考えられますので、機会を見て本格的な修理をお申し付け下さい。
接合部が緩んで
がたつく
天然の木材は加工した後も何十年、何百年と生きています。そのため完成直後ではきちんと組み込まれていても、やがて乾燥等により木が痩せると、接合部に隙間やズレが生じてきます。伝統家具の世界ではこれらの変化は織り込み済みであり、たとえそのようになったとしても機能や強さを保つように、全てほぞ組みにて製作されております。しかしほぞ部の接着に使用される接着剤には寿命があり、経年で接着力が低下すると緩んでくることがございます。松本民芸家具の製品は全て、再び締め直すことで緩みを直すことが出来ます。お気軽に修理をご用命下さい。
抽斗がきつく
開かない
これらの多くは上記とは逆に設置場所の多湿によって木材が膨張して起こる現象です。緊急の対処方法としては、家具を壁面から離し、動く抽斗は全て本体から抜き、衣類や紙類などの湿気を含みやすいものは外に取り出した状態で、エアコン等を使用して室内全体を強めに除湿して下さい。更に家具内部に向けて扇風機などで風をあてていただくと、一時的に開く場合がございます。しかし頻繁にきつくなる場合には一度ご使用環境に合わせた調整をさせていただきますと、今後そういった現象は起こりにくくなりますので、お気軽に再調整をご用命下さい。
その他御不明の際には、お気軽にお問い合わせください。