一閑張について

一閑張とは、その昔、中国よりの帰化人、飛来一閑が紙で器を作り、その上に漆を塗ったのが始まりだといわれています。木製の器にわらび糊で和紙を張り、柿渋などで下地をして漆を塗って仕上げるこの技法は、変形も少なく、和紙の地肌の味に漆の味がしっとりと調和し、千宗旦がこれを愛玩したことから、茶の世界においてその名が広まりました。
現在、一閑張とは次の二つの技法を含めてそう呼ばれています。一つは、前記した木地の表面に紙を貼って漆を塗った物と、型に紙を貼り重ねてボディーを作り、漆を塗って仕上げる物です。これをはり抜き(紙胎)といいます。両者とも、紙と漆が主材料ですが、技法も趣もまったく違います。特に、紙胎の技術は飛来一閑が渡来する以前、古くから日本に見られ、12世紀に作られたものも金剛峯寺に現存しています。
どちらにしても、非常に軽く、また丈夫であったため、茶の世界だけでなく、広く一般に浸透し、庶民の生活に日常的に使われるようになりました。産地としては、今の愛知(尾張、美濃)が良質の紙の産地であったため、多数、一閑張の製品が作られたようです。
他にも、京都、東京など多くの産地があり、そのなかに松本も入っていました。しかし、どの産地も一閑張で数多く作られていた小箱などが、次第にプラスティック製のものに台頭されてくるにしたがって衰退してゆき、現在ではほとんど残っている所はありません。
松本民芸家具は、一閑張の仕法、およびその風合いに注目し、長年一閑張の研究をしてきました。特に、尚一層丈夫にするため下地に寒冷紗をはって仕上げた座卓や棚などは、通商産業大臣より、伝統的工芸品「松本家具」の一つとして指定されています。
比較的安価でありながら上品な質感を持ち、軽く、使い勝手のいい一閑張。無垢の家具とは又違う温もりを感じていただける事でしょう。

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