製造工程

1・素材

ミズメザクラを主用材に、欅、楢、栓、栃、楓など、すべて国産の落葉高木を使用している。

2・乾燥

製材によって挽き分けられた材料を、厚みにあわせて野外にて天然乾燥する。最低1年、長いものでは5年、10年野積してあるものもめずらしくない。そうして自然乾燥された材料にさらに人工乾燥を施し、しっかりくせの抜かれた材料は家具として使用する状態に近づけるよう1ヶ月ほどシーズニングをする。

 

家具作りとは木の命を生かすこと。
木は呼吸しているから、長い間には狂いが出る。
それを見越して材料の使い所を考えねば。 職人:洞貞治

3・設計

膨大な資料を基に、すべて手書きによって一枚々書かれる松本民芸家具の図面。一見するとまるでスケッチのようだが、大切なことはすべて書き込まれている。製作上の約束ごとは職人の頭の中にあるのである。

 

設計するときは、そのもの単体じゃなく、
使い方を思い描き、使う人の暮らしの中に
うまく調和するかどうかを考える。 設計:江崎勉

4・製造

まず、木取職人が適材を吟味し材料を用意、その後組立職人が様々な技術、道具によって一つ々を手のひらで確認しながら部材に仕上げ、また様々な伝統工法によって一人の職人が責任をもって一つの家具に組み立ててゆく。家具の裏に刻まれる銘は、その職人の「長く使ってほしい」という想いと、「仕事に責任を持つ」という誓いの証である。

 

 

家具は僕よりよっぽど長生きする。
その分、ありったけの力を注ごうとすることが
職人の良心だと思うんですよ。 職人:牧内達朗

5・道具

家具を作る上でなくてはならない道具。新しい仕事が出るたびに道具を自分で作る。道具が作れて半人前。鉋だけでも百種類近くある。年期は道具立ての道具の数ですぐにわかる。
 

道具は自分の手の延長。なくちゃはじまらない。
言ってみりゃ飯の種だな。 職人:柴崎玄悟

6・塗装

出来上がった生地の家具は、そこから塗装職人の手に委ねられ、最後の仕上げが施される。塗装は拭漆とラッカー塗装の二種類。どちらも長年の使用でさらに美しくなるよう、手塗りで最低8回以上丹念に塗り重ねられてゆく。

 

長いこと仕事すればするほどお客の目が厳しく
感じるようになったな。 塗装職人:太田攻

7・完成

塗り上げられた家具は、時にガラス、金具などを施され、一旦完了をむかえる。しかし私たちは、それよりさらに何十年と使い込まれ、よりその輝きが増したときこそ、やっとその家具の完成の時と考えているのである。

お客さんに育ててもらう。人に「人柄」があるように、
物にも「物柄」があるんだよ。 会長:池田三四郎

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