日々のお手入れについて 末永くお付き合いしていただくために

松本民芸家具は工場で出来た時がその完成ではありません。使い手によって磨き込まれ、より美しく育っていく過程を経て、完成していくものだと考えています。日々のお手入れを行いながら年を経て、時には修理を行いながらも使い続けることで、新品の時とは違ったより深い本物の美しさを醸し出します。

松本民芸家具の製品は、通常製品、漆製品ともに毎日のように拭き込むことで色が透け、つやを増すよう丹念に自然な塗装を施してあります。購入された初期はごくわずかな傷をつけてしまっても気になるかもしれません。しかし、松本民芸家具は現在一般に多く用いられる硬質な塗装は使わず、あえて昔ながらの塗装法を施すことで、日々のご使用やお手入れによる経年変化がおこり、使いこまれた味わいがよりはっきりとあらわれやすくなっています。

日常のお手入れ

柔らかい布で木目に沿って乾拭きしてください。
汚れを落とす場合は固く絞った布で水拭きしたあと、乾拭きにて表面が乾いた状態になるよう水分を拭きとってください。

長年の使用で汚れが目立つとき

家庭用の中性洗剤を、使用上の注意をよくお読みいただいた上で、水で100倍から400倍に薄めて汚れを拭きとっていただき、その後洗剤と水分を残さないよう濡れ布巾と乾拭きとでよく拭きとってください。
アルコールを含む洗剤は塗膜を溶かす可能性があるため使わないでください。

化粧品、薬品やアルコールには気をつけて

塗装面を溶かしてしまう溶剤が含まれているものをこぼしてしまうと、白いしみになってしまうことや塗膜が溶けてしまうことがあります。

除菌等の目的でのアルコールスプレー、アルコールティッシュといった掃除用具は白いしみやくもりの原因となるため使わないでください。

直射日光やストーブの熱は避けて

強い光や熱によって塗装面がやけどのように荒れたり、変色したりといった塗膜の異常が起こる可能性があります。

天板には熱いもの、水分のあるものは直接置かない

必ずお盆や茶托を敷いてお使いください。輪ジミと呼ばれる白い痕が残りやすくなってしまいます。水気のあるものをこぼしてしまったときは乾拭きでよくふき取ってください。

テーブルクロス、クッションは天然繊維のものを

ビニールマットなど可塑剤の入ったものをお使いになると、家具の塗膜が溶かされてしまう、または張り付いてしまうといった可能性があります。
また、イスの座面に椅子敷きをお使いになるときはビニールのすべり止めは使わないようにしてください。シリコンのすべり止めならば変化はないことを確認しています。

ラッシ編み製品のお手入れ

こすらずにやさしく扱い、ほうきや掃除機でほこりを取ってください。湿気の多いところは避け、水をこぼしてしまったときはていねいに水分を拭きとった後、日陰の風通しの良いところで十分に乾かしてください。
がまとも呼ばれるラッシは天然のものですので、ごくまれに虫が発生することがあります。その場合は殺虫したのち、日陰の風通しの良いところに数時間乾かしてからブラッシングしてください。

こんなときは

テーブルの天板や椅子の肘掛けがべたつく

特にお食事に使用するダイニングテーブルや椅子などに起こりやすく、家具の表面に油脂分や汚れが付着したままの状態が長期間続くことで塗装の膜そのものが変質してしまうことが原因です(お食事での油分だけでなく、空気中の油煙、皮脂や軟膏、ハンドクリームなどに含まれる成分でもこのような症状が出ることがあります)。
この症状を防ぐためには、上記の日常のお手入れと同時に、家具の表面にくもりを感じるようになりましたら、塗装面の油分と汚れを落とすため、水で100倍から400倍に薄めた中性洗剤や石けん水にて汚れを拭きとっていただき、その後洗剤と水分を残さないよう濡れ布巾と乾拭きとでよくふき取ってください。

ただし、既にべたつき症状が出てしまっている場合には本格的な修理が必要ですのでご用命ください。

天板に白い痕ができてしまった

熱いものを直接置いたり、アルコール等を含む液体を付着させてしまった場合に発生するこの現象は、あくまで表面的なものであり、ご使用に重大な影響を及ぼすことはありません。また、そのままお使いいただくと時が経つにつれ消えてしまうこともございます。

年月を経ても消えない白い痕を完全に直すには修理が必要ですので、ご用命いただければ対応させていただきます。

抽斗の下から粉が出る

これは抽斗の底の部分と、それを受ける本体とがこすれ、次第に木材が削れて粉状になって出てくるものです。これは特に長年の使用で必然的に起こる現象であり、対処方法としては抽斗を抜き出し、底面左右のすれる部分にロウソクなどを塗りこんでください。こうすることで粉は出なくなります。
しかし、将来的なことを考えますとまた発生し、抽斗自体にがたつきが生じることが考えられますので、機会を見て本格的な修理をお申し付けください。

接合部が緩んでがたつく

天然の木材は加工した後も何十年、何百年と生きています。そのため完成直後はきちんと組み込まれていても、やがて乾燥等により木が痩せると、接合部にすき間やズレが生じてきます。伝統家具の世界ではこれらの変化は織り込み済みであり、たとえそのようになったとしても機能や強さを保つように、すべてほぞ組みにて製作されております。
しかしほぞ部の接着に使用される接着剤には寿命があり、経年で接着力が低下すると緩んでくることがございます。松本民芸家具の製品は全て、再び締め直すことで緩みを直すことが出来ます。お気軽に修理をご用命ください。

抽斗がきつくて開かない

これらの多くは上記とは逆に、設置場所の多湿によって木材が膨張して起こる現象です。緊急の対処方法としては、家具を壁面から離し、動く抽斗は全て本体から抜き、衣類や紙類などの湿気を含みやすいものは外に取り出した状態で、エアコンなどを使用して室内全体を強めに除湿してください。さらに家具内部に向けて扇風機などで風を当てていただくと、一時的に開く場合がございます。
しかし頻繁にきつくなる場合には一度ご使用環境に合わせた調整をさせていただきますと、今後そういった現象は起こりにくくなりますので、お気軽に再調整をご用命ください。